痔のエンジニアを支える技術
※専門家ではないので、以下の文章はn=1の経験談として読んでください。
腰痛エンジニアを支える技術や手が痺れるエンジニアを支える技術を読んだ。
上の記事の腰痛や神経痛をはじめ、肩こり・頭痛・神経痛・腹痛などすぐに死ぬわけではないがQoLに結構な支障をきたす慢性の疾患を抱えたエンジニアというのは回りを見渡しても割と多いと感じる。自分の場合はそれが痔である。
下痢や便秘の際に切れ痔になった経験があるという人は結構多い。だから「あー痔か、自分もなったことあるよ」みたいな軽い反応をもらうのだけどそういう人の痔は一過性のもので、いわば転んで擦りむいたくらいのレベル。
自分の場合は慢性的な外痔核である。外痔核とは何かという説明をする前にそもそも痔にはいくつか種類があるので簡単に説明しておく。
痔の種類
裂肛
いわゆる切れ痔である。便秘で便が固くなってしまった場合や下痢でゆるくなり便の排出速度が上がり切れてしまうなどが主な原因。通常は一般的な切り傷同様数日で直るが、何度も繰り返していると潰瘍ができたり傷が直る際に肛門が狭くなっていく肛門狭窄という状態になる。この段階までくると排便時は毎回切れ痔が起きるようになってしまう。
痔核
いわゆるいぼ痔である。肛門に強い力がかかるとうっ血が発生し、手に血豆ができるような感じでイボができる。日常生活における肛門に負荷をかかる全ての場面で発生する可能性がある。痔核の中でも肛門の中にできる内痔核と外痔核がありそれぞれ症状や対処法は異なる。
内痔核
内痔核は肛門の中にイボができるタイプの痔核である。段階がレベル14まであり12ではそれほど生活に支障はないが34レベルになると手術が推奨される。12レベルの内側の痔は排便時に血は出たりイボが露出したりするが痛みはそれほどないが、それ以上のレベルになると下着に鮮血が見られるような状態になる。ここまでくると手術だ。
外痔核
外痔核は肛門の外にイボができるタイプの痔核である。この痔の特徴はなんと言ってもとにかく痛いことである。肛門の中とは違い、肛門の外側は神経が集中しているのでイボに何かが触れると激痛が走る。強めの口内炎が肛門にできたと想像してほしい。排便時に100%の確率でそれが刺激されるのでどう頑張っても痛みから逃れられない。排便はほぼ毎日あるので毎日の排便が恐怖になる。
痔ろう
肛門内部が炎症を起こし化膿、その膿を排出するための膿の管が肛門に残った状態のこと。激しい痛みや発熱を伴う。どの段階であれ、痔ろうとなればほぼ手術になる。
対処法
痔ろう以外はどの痔の場合も酷くない場合は基本的に保存療法か外来処置(飲み薬や塗り薬など)で済むはず。一方で慢性化している場合は手術となることが多い。最悪の場合は人工肛門になることもあるし、そもそも大腸などに腫瘍があったりして別の病気の場合もある。
とにかく早めの受診によりあらゆる悲劇は避けられるので自分で判断せず早めに近くの肛門科へ行くのが最適解だ。
自分の話
ここまでは痔の一般的な話だが、ここからは自分の経験の話をする。
先述した通り自分の場合は外痔核だった。月に数回、肛門に力を入れた瞬間激痛が走る日が来て、それを境に1~2週間ほどは毎日排便時にお尻を針で刺されたような感じになる。辛いは辛いのだけど、とはいえこれは日常生活の工夫により少し快方することもあるのでのらりくらりと病院へ行かず10年ほど経ってしまっていた。
いよいよ厳しいな...と感じてきて病院へ。そこでレベル2程度の外痔核とレベル1程度の内痔核と診断された。内側の痔に関しては病院で検査を受けて発覚したくらいのレベルで自覚もなかった程度。出血もない。
ただどうしても外痔核が辛いなら痔核の部分を切開して取る、内痔核なら内痔核硬化療法(ジオン注射)を勧められたが、まだ必須というほどでもないという。様子見でも今は大丈夫とのことだったので一旦は保留にして1年ほど時間が経ち、今に至るという感じ。
なのでいまだに痔と共に生きるという生活をしている。(余談だが先生自体も痔持ちで、数年前に手術したが時間が経ってまた痔になっちゃった...と言ってて大変そうだった)。
診察の中で、そもそも自分は何故外痔核ができやすいのか?を先生といろいろ振り返りながら話してみて気づいたのは排便時のいきみの強さである。
体質や食生活の問題で固い便になりやすかったこと、元々スポーツをやっていてある程度筋肉があったこと、決まった時間に必ず排便しようとすること、などが重なったことで、必要以上に強くいきんで硬めの便を無理してでも排出しようという習慣ができてしまっていた。これは幼い頃からの習慣だが誰にも注意されなかったし、自分でも悪いことだと気づかなかった。なんか気づかずにやっていた悪習が自然と痔を招いてしまっていたのだ。
痔を悪化させないためにやってること
以下は主に痔核を悪化させないためにやっていることを書く。
肛門に力をかけない
外痔核に関してはとにかく肛門に過度な力をかけないことが一番重要。なので排便時は無理して出すために腹筋に力を入れたりしない。ちゃんと便意を待て。腹筋に力を入れたりしなくても便は出る。すぐ出ないからといって急がない。
その他にもスクワットなどの筋トレで踏ん張る時や重いものを持つ時なども肛門に力がかかり続けないように気を付ける。肛門への負荷を気をつけるだけでもかなり良くなる。
肛門に力をかけずに直腸から便を送り出すような意識で排便する訓練(ヨガに近い)もやっていて、これはコツが掴めるととても楽に排便ができるようになる。言葉では上手く伝えられないが、これができないと手術してもまた下手くそな排便により痔が再発する。排便のフォーム矯正と思ってやった。
水分を十分に摂る
固い便になるとどうしても排便に力が必要になってしまう。これを防ぐために水分は十分に摂った方が安全。
自分の場合は500mlのタンブラーでぬるま湯を最低3杯~4杯は飲むようにしている。しかもこまめに摂るようにしている。これはがぶ飲みしても人間が一度に吸収できる量には限界があるので。ただしトイレの頻度が多くなってしまうのでなかなか難しいという人もいるかも。
食事
食事に関しては人それぞれだろうなという感じ。よく言われるのは3食バランスよくしっかり食べる方が良いくらいな感じで、特に野菜がいいとか発酵食品がいいみたいなものはない。
が、自分がいろいろ試してみた結果だけ参考までに書いておく。これが正解!とかいうものはない。
- 飯を食べる前にまず多めに水を飲む
- 飲む場合と飲まない場合で翌日の便の硬さが変わるっぽい
- お米を最低1合は食べる
- 米を食べる量が少ないと排便サイクルが狂う。便も何故か硬くなる。
- 納豆・ヨーグルト・キムチを毎日適度に摂る
- 腸がよく動いてるな〜と感じるようになる。便秘予防にはなりそう。単純に発酵食品が好きというのもあるので楽しみ半分で続けている。
- アルコールを摂取しない
- 酒を飲むと翌日の便が硬くなるっぽかったのでやめた。
- 寝る3時間前までに食事は済ませる
- 寝る前まで何か食べてると翌日変なタイミングで便意がきたりするようになる。変なタイミングだと都合によっては我慢しないといけないことにもなりかねない。我慢すると便が固くなっていく原因になるのでなるべく避けている。
食事に関してはこれくらい。あとは外食などでも好きなものを好きなように食っている。
睡眠
夜更かしすればするほど内臓の調子がおかしくなる。大抵排便サイクルが狂うし便がいつもと違う感じになる。そもそも一般的に考えても寝るべき時間に寝た方が内臓や神経系にも良いはずなので無理せず寝ている。
毎日湯船に浸かる
下半身の冷えは血流を悪くして痔ができやすくなる元なので毎日湯船に浸かるようになった。これは病院の先生にも勧められたのでやっている。それまでは湯船を洗うのも湯を準備するのもとにかく面倒だからシャワーで済ませることが多かったが今は毎日湯船で体の芯まで温めるようになった。
痔が辛い時も温かいお湯に使っていると血行が良くなり、いくらか治りが早くなるので痔持ちの人は全員湯船に浸かった方が良い。
座り続けない、またはスタンディングデスク
上記の生活習慣的な対策は前提として、それ以外にできることとして座りすぎないようにするというのがある。エンジニアは職業柄椅子に座り続けがちだが、それは上述の「肛門に負荷をかける」につながるので良くない。
自分は適当に60分おきにiPhoneでタイマーをセットして時間が来たら立ち上がり少しフラフラしてまた座る、といった習慣で作業していた。これはこれで良い。
が、外痔核真っ只中の時はとにかく座ってるだけで痛いことがある。そういう時は立っていた方が楽。なのでそういう時はスタンディングデスクで作業している。
電動昇降デスクというスタンディングデスク専用の机があったりするので検討はしたがちょっと試してみるか〜と買うには高いしデカい。要らなくなった時の処理が面倒。
そこで自宅にあったデスクとちゃぶ台で下のようなハリボテスタンディングデスクを作って使っている(もうかれこれ半年以上これで仕事してる)。
ポイントは下のクッション部分。これ無しで床に立って作業するとすぐ足の裏が痛くて終わる。たまたま普段使いしていた座椅子がちょうど良い高さだったのでこれでなんとかやれている。
座椅子が微妙という時はリカバリーサンダルというのをスリッパがわりにして履いて作業するのも良かった。看護師さんなど長時間立ち仕事をしてる人たちが履いているらしい。
基本的に1時間~2時間くらい立ち続けて、少し座って休んで、みたいな感じで1日仕事をしている。最初のうちは30分も作業してるとキツくなってくるがこれは慣れ。続けてれば慣れてくる。
座らなくなることでお尻への負荷だけでなく腰への負荷も体感的に減ってる。変な姿勢で座るより変な姿勢で立つ方が難しいので姿勢の維持の観点では個人的には立ってる方が楽だ。
ただし立ち続けると足が痛くなってくるのでそれは適度に休みを入れるしかない。あと、デスクの高さの設定をミスると肩が凝る。高さの微調整を細かくやりたいなら先程の挙げたちゃんとした電動昇降デスクを買った方が良さそう。
現在
病院に通って以降色々やったのもあって、最近はもう少なくとも3~4ヶ月は外痔核で苦しんでいない。上記の悪化させないための諸々を今後も続けていく必要はありそうだけど、基本的には硬い便を避けつつ排便時に気をつけることさえできればあとはなんとかなりそう。
また以前のような厳しい状態になったら本格的に手術を検討してみようかねとも先生とは話している。とはいえ手術せずになんとか終えられたら良いな…という感じ。内痔核の手術なら術後の痛みは少なめだからすぐやってもいいけど、外痔核の術後は出産を経験した人でも辛かったと聞いたのでめちゃくちゃ怖いのが正直なところ...。
とはいえ痔核は痔の中でも手術すれば治る病気の一つなので、金と時間と気合いさえあればなんとかできる(はず)。色々めんどくさい人は(痔核なら)手術するのが多分早いんだろう。
おわりに
痔の"エンジニア"を支える技術と題して書き始めたがエンジニア的な要素はスタンディングデスクくらいで、その他は痔一般の知識と痔主の経験談になってしまったので申し訳ない(のでZennではなく自分のブログに書いた)。
排便は食事と同じくほぼ避けることができないし肛門以外の場所で代替することもできない。肛門はとてもクリティカルな場所だからこそ健康に保つための最低限の知識は全員持っておいて損はない。
痔は身近な病気であり軽んじられがちだが、悪化させるとQoLが駄々下がりするはめになる。何年も痔に苦しんでいる - 怠惰を求めて勤勉に行き着くでは慢性的な切れ痔に悩まされているエンジニアの話が書いてある。痔核の場合は手術(と術後の結構な痛み)を耐えられればある程度の期間は良くなるようだが悪化した切れ痔の場合はより大変そうだ。痔ろうに関しては言わずもがな。
痔に関してはどの状況でもとりあえず病院に行くのがいつでも最適解なので気になったら恥ずかしがらずにすぐ行け。
リンク
- 痔の総合情報サイト《痔-web》
- 痔主の聖典
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